2004年
No.1 みかんの摘果確認、無事終了
No.2 目慣らし会
No.3 海を渡るイノシシはみかんが好物?
No.4 英子さんvs てっぽう虫の仁義なき闘い
No.5 神の川で甘夏ジュースとみかんの蜂蜜を食す!
No.6 「甘夏をまるごと味わう」〜甘夏マーマレード作り〜
2005年
No.7 「恐怖、サビダニの被害・・・対応策は?」
No.8 「枯れるまできばらんば(がんばります)」
No.9 「生産者に聞こう! 田上英子さんの巻」 〜みかん作りが人生たい〜
2006年
No.10 06年度 みかんの出来〜英子さんの呟き〜
No.11 水俣のキンさんギンさんが語る「みかん作り」と「水俣病」
○みかんの摘果確認、無事終了! 9月10日(金)、相思社のみかんを生産してくれている人達が一堂に会し、摘果 確認を行った。摘果の主な目的は、大きく味の良いみかんを作ること。その為 に育ちの悪いみかんは早めに摘んでしまう。その摘果状況を確認するために、 全員でそれぞれのみかん畑を見ていく。平均年齢は高いが、皆さんとても元気 で、道中笑いが絶えることがない。中には笑いすぎて入れ歯が口から飛び出す 人も。しかし、話題がみかんの話になると、真剣な意見交換が始まる。今回話 題になったのは、毎年悩まされるサビダニへの対処法について。水俣の廃油を 利用したせっけんを、どれぐらい薄めて使うか?「50倍がいい」という意見も あれば、「100倍だ」「いや150倍だ」という意見も。活発な意見交換は、でき るだけ農薬を使わずにみかんを作るため。今年も美味しくて安全なみかんが期 待できる、そう感じた一日でした。 今年は裏年ということと、雨が少なかった影響で収量が若干少な目。相思社 の厳しい?チェックをくぐり抜けられるみかんはそんなに多くないかも?ご注 文はお早めにお願いします。
○目慣らし会 10月15日(金)に相思社にて「目慣らし会」を行いました。あまり聞き慣れ ない言葉ですよね?少なくとも私は全く知らなかったのですが、ようするに生 産者の人達が集まり、今年の出荷基準を決めるというものです。この場合の出 荷基準とは、みかんの見た目のことです。農薬散布については一定の基準があ りますが、 減農薬栽培の宿命としてどうしてもサビダニ等で多少見栄えが良くないものも できます。それは農薬をできるだけ使わないということの現れでもありますし、 味に問題はないのですが、やっぱり美味しく食べるには見た目も大事ですよね? ということで、毎年みかんの出来映えを考慮しながら基準を設けています。 ○今年の基準は・・・ 今年九州は台風の当たり年でした。みかんの実は風には強く、実が落ちると いうことはあまりないのですが、強い雨風でこすられると傷や病気が発生した ります。そういった外傷が見られるものの、全体的な成育としてはきれいなみ かんが多い、という状況なので、出荷基準はだいたい例年通りということにな りました。サビダニ等のみかんが1箱にいくつか入っているかも知れませんが、 味・品質等に問題はありませんので、安心してお食べ下さい。もちろん日焼け みかんやカメムシの被害果は出荷しません。11月に入ったら出荷が始まります ので、首を長くしてお待ち下さい。
水俣は暖かい日々が続いていますが、気がつけば年の瀬、みかんの美味しい 季節になってきました。やっぱり冬はコタツにみかんですよね。正月用にぜひ ご注文を、と言いたいところですが、今年はみかんが少ないんです。収量も裏 年ということで少ないのですが、今年はなんといってもイノシシと鳥(メジロ、 カラスなど)の被害が大きかったですね。相思社のみかん生産者の方々は低農 薬でみかんを作っているので、みかん畑にミミズがいるんですね。イノシシは 土を掘り返してそのミミズを食べる、そしてみかんも喰う。立ち上がって食べ るので、1m50cmぐらいの高さのみかんも落として食べるんですね。イノ シシにも色々いるようで、きれいに食べるやつもいれば、食い散らかすだけの やつもいる。せっかく落としたんだから、最後まで食べろ!と言ってやりたい。 そして水俣のイノシシは泳ぐんですね、漁師の方に話を聞くと海を渡ると言 う。しかもかなり速く泳ぐらしい。漁師の人も捕まえようとするが海ではなか なか捕まえられないと聞く。海を渡ったイノシシは水俣ばかりでなく対岸の御 所浦の甘夏にも被害を及ぼす。今年は11月15日が猟の解禁日で、それ以後 はだいぶ減りましたが、そうすると今度は鳥が来る。下から上から攻められて みかんはボロボロ。やっぱり山に食べ物が少ないのでしょうね。山に野生の柿 や木の実が少ないから山から下りて来ざるをえない。人はどんどん山や森を切 り開いていくし、そのうえ高齢化などで農地が減っているものだから被害が集 中してしまう。ですが、被害の乗りこえたみかんは美味しく実っています。こ れからの年末年始、ぜひみかんをコタツのお供にしてやって下さい。今年もお 世話になりました。来年もよろしくお願いします。
明けましておめでとうございます。昨年は裏年(みかんには表年と裏年があ
り、収量に影響がでる)ということに加え、メジロやイノシシなどの被害に悩
まされた一年でした。全国的に収量不足だったようで、市場価格も高騰してい
たようです。相思社はおかげさまで値上げもせず注文を断ることもなく、今年
に入って温州・青島みかんの出荷をほぼ終えることができました。ありがとう
ございました。これからは雑柑の季節です。雑柑は温州に比べてさらに農薬を
少なくしています。安心してご利用下さい。
そうそう、温州みかんの販売は終わりましたが、生産者の方は忙しい日々が
続いています。先日、田上英子さんのみかん畑に行ったら、収穫を終えた温州
みかんの木の周りの草刈りをしていました。なぜ今頃?と思い聞いてみると、
「てっぽう虫対策のため」ということでした。てっぽう虫はカミキリ虫の幼虫
で、幹を食い荒らして木を枯らせてしまうのです。低農薬でやっているので、
対策は見つけたらすぐに殺すしかありません。その為に草を刈っておいてすぐ
に見つけることができるようにしているんですね。みかんの木は通常50年ぐ
らい(経済的樹齢)は収穫できるのですが、てっぽう虫にやられるとすぐに枯
れてしまいます。販売する方、食べる方としてはどうしても収穫の時期にばか
り目をやってしまいますが、生産者の方はすでに次の収穫に向けて準備を始め
ているんですね。改めてみかんというのは一年間の努力の結晶なんだな、と実
感させられました。
もっとも当の英子さんは「いくら気をつけてもやられるもんはやられる、少
しは仕方なか」と、大きく構えていました。英子さんとてっぽう虫の闘いは英
子さんのおおらかさに助けられたてっぽう虫の優勢勝ちでしょうか。
○神の川(袋地区)のみかん園 3月6日、東京からの修学旅行生と一緒に神の川にあるみかん園へ行ってき た。今年、相思社にも「しらぬい」を提供してくれた吉田浩司さんと寺床明子 さんのみかん園だ。みかん園からは不知火海がよく見える。日当たりも最高で、 太陽の光を上から直接浴び、下からは海からの照り返しを受ける。潮風にも恵 まれ、みかん作りには最高の場所。思わず時間を忘れてしまいそうになるぐら い心地よいそのみかん園で体験学習を行った。 ○みかんの蜂蜜? 「甘夏ちぎり」という体験プログラムだったのですが、明子さんが石飛の紅 茶とパン、そしてみかんの蜂蜜で迎えてくれました。皆さんはみかんの花から 取れる蜂蜜があるのをご存知でしょうか? みかんの花は4〜5月頃に真っ白 な花を咲かせるのですが、みかんの花から甘酸っぱい匂いが漂いだすと蜂蜜の 時期が到来した証拠です。どこからともなく養蜂家の人が来て、蜜蜂を放して 蜂蜜を取っていくそうです。その蜂蜜を学生さん達と一緒にいただいてきまし た。みかんの花の蜂蜜は甘さと柑橘系の香りを備えたさわやかな味。初めて食 べるその味に学生さん達も口々に美味しいと大喜び! 甘夏ちぎりも好評で、 その場で絞ってジュースに。絞りたてのジュースは新鮮で濃く、無農薬だから こその安心安全な味。みかんを丸ごと堪能した一日でした。 最後に浩司さんが「おいしかったですか? だったらそれだけでいいです。」 と話してくれた。水俣病の話は全くしなかったけど、これも立派な「水俣病を 伝える」プログラム。学生さん達も僕の話は覚えていなくても、きっとこの日 のみかんの味は覚えているはず。みかん園でこの日一番の笑顔を見せてくれた ことがなによりの証し。水俣のみかんの実には豊かな自然の恵みと有形無形の 想いがぎっしりと詰まっている。
春ですね!水俣の桜はもうすっかり散ってしまいましたが、みかんはこれから新しい芽が出て、5月にはみかんの花が咲きます。その頃になるとサビダニの恐怖が…、今年のみかん作りはもう始まっています。今年はそういったサビダニの話や、みかんができるまでの様子、生産者の方のインタビュー等もお伝えしていきたいと思っています。ご期待下さい。
さて今回は、マーマレード作りの話です。相思社の甘夏は担当職員が1名いて、1月の収穫だけは職員総出でしています。昨年度は担当職員の神沢さんの甘夏への愛が実り、収量・形・味ともに素晴らしい出来でした。ですが、どれも大きいわけではありません。日当たりの悪いところにある玉などは小さいので収穫せずにそのまま切り落としてしまいます。マチから来た僕なんかからすると思わず「もったいないな〜」と思ってしまいますが、残念ながら売り物にはなりません。ですが食べる分には何の問題もないので、職員でこっそり?と再度拾いにいきます。そこで自然を美味しくいただく達人の相思社職員、小里さん指導の下に職員とその家族が集まって甘夏マーマレード作りをしました。
工程は、
1.甘夏を洗い皮を4枚にむく。
2.皮をきざみ、水洗いして苦みをとる。
3.実をしぼってジュースをとる。
4.皮とジュースをなべに入れ皮にジュース分をしみ込ませる。
5.煮る。
6.砂糖を入れる。
7.ペクチンを入れる。(甘夏の種を煮て抽出する)
8.できあがり。
9.びん詰め
果実、皮はもちろんのこと種まで使う。まさにまるごと1個いただく。農薬や化学肥料を全く使っていないからこそできること。安心、安全な食べ物を作ってくれる生産者の方々に感謝!!今更ですが、加工してみて改めて実感しました。今日も神沢さんはこれから甘夏の木の剪定。今年も彼の愛情は実るのか?結果は今年の甘夏でお確かめ下さい。(おぉ、最後は宣伝になってしまった。)
写真はこちら
4月8日、生産者の人たちに集まってもらって、今年度の栽培方針について話合いました。
今年は新しく相思社の生産者の会に、肥薩自然農業グループの新田九州男さんと吉田浩司さんが加わってくれました。そのお二方を交え、今回議論になったのは「サビダニ」についてです。名前のとおりダニの一種で、非常にやっかいな害虫です。やっかいというのは、肉眼で見えにくく、広がりが早く、薬がききにくい、そして被害が酷い、という特徴があるためです。
今回、新田さん達が話してくれたのは、「サビダニが肉眼で見えるようになってからでは遅い。サビダニは卵の状態で越冬し、新芽の時期には孵化して葉っぱについている。その時期に40倍ぐらいのルーペで確認して、対処しないといけない。」ということでした。現在、生産者の会ではサビダニへの対処として、「せっけん」を使っています。水俣の家庭からの廃油をリサイクルして作った安全なせっけんです。ですが安全な分、効果が弱く、タイミングがズレるとあまり効果がでません。例年はサビダニの被害が出だしてからあわててせっけんをかけるのですが、時すでに遅し。その時には既に別の木に移ってしまった後なんです。孵化した直後にせっけんを散布しないといけない。英子さんなんかは「はぁ〜。みかん作りは50年以上やっとるばってんが、サビダニが(最初は)実じゃのうて葉につくなんて、そげんこと考えもせんかった。」と驚きの声を上げ、一同爆笑。
今年度は肥薩自然農業グループの方々の加入によって、色々と改善することでより美味しくて質の良いみかんをお届けできそうです。ただ僕なんかは、英子さん達の今までのみかん作りの方法というか、考え方というのもライフスタイルとしていいな〜、とつい思ってしまいます。僕が以前関わっていたあるNGOではアジアの研修生に有機農業の研修を行っているのですが、ある研修生から「有機農業をするようになってから忙しくなった。以前は農業の合間に子どもと遊んだりしていたけど、そういった時間も無くなってしまった。」という話がありました。確かに有機農業というのは素晴らしいことだと思いますが、農薬などに頼らない分、どうしても手間がかかります。
もちろん農薬や化学肥料を使わずにできるならばそれに越したことはありませんが、それで生産者の生活が過度に圧迫されるのはどうかなと思ってしまいます。だから相思社は完全有機無農薬でなく、低農薬を指向しているんだと勝手に考えています。人に害を与えない程度で、かつ色々な意味で持続的な農の営み。相思社の生産者のように高齢化してくるとただでさえ大変になってきます。サビダニなどの害を野放しにしておくことはもちろんできませんが、猪やヒヨドリなんかにも毎年のように食べられながら、それでも笑いながらみかん作りをしている英子さんたち。それはそれでいいなーと思ってしまうのは、生産の現場をまだよく分かっていないからなんでしょうか?
今年の摘果確認も無事に終了しました。摘果確認は生産者が一堂に会して全員のみかん畑を見てまわります。主には摘果といって、より良く成長させるために不要なみかんを撮ってしまう作業の確認をしながら、肥料や天候などの情報交換も活発にします。今年は梅雨時期に雨が降らなかったので、全体的に玉のびが悪く、小玉が多いようです。収量も表年の割りには少な目ですが、みかん一玉の栄養素や成分はそれほど変わらないらしく、小さいぶん甘みのあるみかんが期待できそうです。
同じみかんの畑を見てまわっても正に十人十色、それぞれの個性が表れています。田上英子さんと田上百合子さんの畑は、自分達の身長に合わせてみかんの木も低くくてかわいい畑。相思社の生産者グループの中でも高齢な田上昇さんは今年から息子の憲一さんに畑を任せるようになり、大きく変わった畑をみて他の生産者が一言、「やっぱ人が若返ったら、みかん畑も若返る」と。
一方、今年もイノシシがミミズを狙って根っこを掘り返す、てっぽう虫(かみきり虫)などが多発し、みかんの木が枯れてしまうという被害が発生しています。困ったものですが、みかん作りのベテランの皆さんはこれぐらいでは動じません。
「みかんの木が枯れるよか、おっどま(自分達)が枯れる方が早かじゃなか。」
と笑い飛ばしていました。
今年はエコネットみなまた(旧水俣せっけん工場)のせっけんをみかんと一緒に販売します。エコネットみなまたでは、水俣の廃食油を集めて作った人にも環境にも優しいリサイクルせっけんと新油を使った化粧石けんを作っています。乞うご期待。
なんだか最後はいつも宣伝になってしまう。ちょっと反省。でも今年もよろしくお願いします。まだよく分かっていないからなんでしょうか?
今回から新シリーズ「生産者に聞こう!」を始めます。パチパチパチ(^o^)丿
これから相思社のみかん生産者の人達に、みかん作りのあれこれを聞いていこうと思っています。記念すべき第一回目はおなじみ水俣の金さん銀さんこと田上英子さんです。
坂西:英子さんはいつからみかんを作り始めたんですか?
英子:28才ぐらいからじゃったかな。学校を出て、チッソのカーボン工場で3.4年働いてから結婚したもんな。そっで、からいもと麦を作りよったばってんが、もうこれからはからいもは売れんちゅうて、温州みかんを作り始めたったいな。
坂西:最初は農薬や化学肥料を使いながらみかんを作っていたんですよね、なぜ低農薬で作るようになったんですか?
英子:ずっと農協に出荷しとったばってんが、柳田さん(相思社の設立時の職員)が来て「あんたも出してくれんかな。低農薬だったら、(外見は)どげんとでんよかったい」っち。農協は(外見の)よかやつばかりやながな。だから、柳田さんから相談された時も「そりゃよかったい。もう農協に出さんでよかったい。」っち。
坂西:農薬を減らすのは大変じゃなかったですか?
英子:昔はサビダニもでらんかったし、そげん農薬かけんかったで農薬を減らしていくのはそげん大変じゃなかたったいな。でも農薬はきつかもんな。前は農協の指導でダイホルダンち強い農薬をかけおったもんな。そればかければ顔がこげんかぶれたりして、10日から20日はかゆかっじゃもんな。今はせっけん、来年からは牛乳やけん、いくら(体に)かかっても良かがな。
坂西:みかん作りをしていて、しんどいことを教えてもらえますか?
英子:草払いも大変やばってん、一番は夏の摘果。大変じゃな、一番暑か時やがな。ほっで天気次第じゃっでな。雨が降ればあんま摘果すれば玉が太なるし、ほっでまぁよかろうって思て摘果せんば雨が降らんで玉が小さくなってしまう。木と天気と両方見んばいかんが、最近は天気がおかしかでな。大変じゃ。
坂西:うれしいことはなんですか?
英子:うれしいこと、、、なんち言えばよかがな、楽しみやっで作っとじゃな。百姓やもんな。じゃっでみかんや野菜を作ることそのものやな。そっで作って孫たちにやったり、人に食べてもらったりすっとも楽しみじゃな。家におると落ち着かんばってんが、畑にくればな、なんか気が安らぐとな。みかん作りが人生たい。
田上英子(78)さんに2006年の作柄、天候等について聞きました。
−今年は花が例年になく咲いて、こりゃ摘果がたいへんじゃち思っとった。ばってん4月中旬頃に雨がよう降って、花が実にならんうちに落ちてしもうた。今年はただでさえ裏年(みかんは豊作と不作を一年ごとに繰り返す)なのに、さらに量が少なか。
ただ良いこともあって、天候のせいか温州みかんの天敵のサビダニが今年は出んと。だから毎年使っとるせっけんなんかもかけずにすんだ。でも、風ずれも多くて、見た目が悪いみかんが多か。そういったみかんを除けるともう少なか、少なか。
こりゃ今年はどげんなっとやろって思ってたばってん、9月になって晴れの日も多いし、日中は気温も高いんで、温州みかんはだいぶ味も乗ってきた。このまま行けば量は少なかばってん、味の良いみかんがお届けできるっち思います。
みかん便りNo.11 水俣のキンさんギンさんが語る「みかん作り」と「水俣病」
水俣のキンさんギンさんこと田上英子さんと田上百合子さん。二人はとても仲良しで、おしゃべりが大好きです。二人の会話にはいつも笑いが絶えません。今回はちょっとそんなお二人に苦労した時代のお話を伺いました。
坂西:英子さんと百合子さんは、いつ頃からミカンを作り始めたんですか?
英子:一九二八年生まれじゃもん。二八歳ぐらいじゃったかな。
百合子:私は一九二七年生まれじゃっで、今度の八月で七九になっと。八〇までみかん作りばするて思うとるばってんが。今年も、もうやっと作ったっじゃ。後がおらんじゃって、ここ(英子さん)は後継者がおるで良かばってん。うちはおらんで。
坂西:いきなり暗い話は止めて下さい(笑)。それにしても一九五六年ぐらいから作ってるんですね、半世紀ですよ。水俣病の歴史とも重なりますね。百合子さんは水俣にいつ来たんですか?
百合子:私は愛媛の新居浜で、こっち来たとは一九四六年、終戦後。うちの親父さんと、ここの親父さんが兄弟じゃっで。私は七つのときに田上家に養女としてもらわれて。だけん、英ちゃんとは血は引いとらんばってん、いとこ同士になるわけたい。
もう、そりゃ、あわれなもんだったよ。この人(英子さん)たちは、やっぱり親がしたり、見たり聞いたりしとるばってんか、(私は)こっちの生活は全然わからんがな。あん苦労は誰ん言ってもわからん。(井戸の)釣瓶を使ったら手に豆ができたち、笑うばってんか。うちが(水汲みが)下手なもんじゃっで、(井戸の)下でバケツとバケツとガチャンこ。水は濁って大変じゃった。うちんばあさんが「バケツ傷むで」ちゅうて汲み直して。愛媛にいた頃は水道とかポンプがあったもんじゃっで。こっち来てからが苦労も苦労(笑)。
坂西:今日は相思社にミカンを出し始めた頃の話が聞きたいんですが、あの頃相思社が扱っていたのは水俣病の患者家族のつくったミカンだけですよね。百合子さんもそうですか?
百合子:じいさんが認定されとった。だけん好かんでな、水俣病が。英ちゃんのところの信義さんが裁判に行って、テレビに映れば「また今日も行っとると? 会社(チッソ)を首になっとじゃっで、すんな(するな)」っち言うとったばってん。区長会議の時、湯飲み茶碗ば出して茶ばもらうとき、手が震えてこげんしたら「あら、あんたは水俣(病)じゃなかろうか」ち言われてな。「申請すれば」っち言うたばってん、じいさんがあんまり好かんでな。
そしたなら、原田先生の来て診察してくれなはったたいな。右手は震えて食べられんばってん、左手でご飯ば食べよらった。認定されたのがちょうど、六三年か六四年じゃなかったかいな。じいさんは死ぬまで頭がぼけんかった。じいさんの部屋には本がいっぱいじゃっで。こけ座っとってな、こまんか字ば読んどらった。
坂西:英子さんのお家では、連れ合いの信義さんが裁判に行っていたという話が出ましたが、水俣病ではなかったんですか?
英子:うん。申請せんもんね。ほっで、ばあさんがな、症状があったばってんが。(当時は)水俣病っちことは恥ずかしいことっち(そういう風潮があった)。旦那もそげんやった。ほっで、坂本しのぶさんの家族の人が「せろ(しなさい)」て言うたばってんか、申請せんかった。
坂西:信義さんはどんな人だったんですか?
英子:そりゃ、やかましかよ(物事にうるさい、几帳面な人)。ここんあたりじゃ、月浦から袋から知らん者はおらん。もう、確実なことでなからんば、ちょっとでも曲がったことは大嫌いで。もう何でんまっすぐいかんばいかん。
坂西:信義さんはチッソで働きながら裁判に行っていたんですか?
英子:じゃった。第一組合やっで給料は少ないし。第一組合と、第二組合とはボーナスがえらい違うたでな。昇給もまぁ、なかった。裁判に四、五年かけたもんな。毎月一回か二回必ず行きよったでな。患者とバス貸し切ってな。「もう、何もせんで、裁判にばっかり行って」って、うちはもう腹が立っとった。給料は安かとに、仕事もせんと、そげんとばっかり行ってと思って。会議も、夜に何遍もありよったがな。裁判やなんやで、もう戦争のごとあった。
坂西:英子さんから見れば、仕事はしないわ、給料は安いわ、夜は家に居ないわで、大変でしたね。
英子:大変じゃった(笑)。ほっで、「そげんと(裁判)すればもう、会社を首になっとじゃ」て言うたが、「組合運動やっとるもんが首になったら、水俣病ん人が助けに来っとじゃっで。絶対首になるちこたぁなかっじゃっで」って。チッソも、結局首はできんとだった。
坂西:そういう信義さんを誇りに思ってたんですか?
英子:そげんとはなか(笑)。人ん為にはなっとるとじゃったがな。じゃっで、葬式にはびっくりするごと人が来てくれらった。「さすが信義さんじゃ」っち言うてくれたもんな。今でも「信義さんがいれば、やかましかことや役所との交渉なんかしてくれるのになぁ」っち言われることは多かがな。ばってん、うちんとはミカン倉庫作った他は何もせんじゃった(笑)。
坂西:今年のミカンはどうですか?
百合子:良かやつがうんと取れたときが一番楽しかもんね。仕事するときは、ちいっと(ちょっと)が良しね。ばってん、銭もらうときはうんとの方が良かね。今年は温州もなっとらんところが多かっじゃもん。うーん、おかしか、おかしか。
英子:四月、花のいっぱい咲いて。ほっで、(こらぁ、もうすごかね、実がたくさんなって夏は摘果が大変じゃね)って思ったら、そん後ずっと雨降って花が落ちてしもうた。花が落ちれば実も落ちる。花の開いた時点で、実はもうついとるもんな。今年のミカンは少なかな。気候がこげんなっとったでな。
坂西:英子さんと百合子さんの、ミカン作りのこだわりを教えて下さい。
英子:出荷のときに、あんまり(外見の)おかしかとは、出されんど? ミカンは五トンちぎれば、(選別するので)三トン出せば良よかほうじゃもんな。フゥ虫(カメムシ)が吸った小玉は出せん。実がいっぱいなっても、小玉が多かもんな。小玉は人にやれるばってん、フゥ虫が吸ったとはだめやもんな。堅くなって、皮もむけんもんな。
坂西:見た目のこだわりは強いですよね。「外見が少し悪くてもいいから」って言ってもくれないですもんね。
英子:そうたい。それで出されんとたいな。買う人の身になってやらな。「無農薬が良か無農薬が良かっていうばってん、みんなやっぱ、綺麗かミカンば好むがな。人にやってもな、「おかしかで良か」ってみんな言うばってん、いなかとは(よくないやつは)やられんもんな。
坂西:逆に外見の良くないミカンを欲しがるお客さんもいるんですよ。低農薬じゃ綺麗なミカンばかりはできないですもんね。五トン中の三トンじゃ、残りの二トンもったいないですから。八〇歳までとは言わずに、今後もお二人で元気にミカンを作り続けて下さい。今日はありがとうございました