


6月17日から3日間、ドイツ南部のフライブルグでエコツアーを体験した。ごんずい40号で「エコツアーみなまた」を特集したように、相思社はこのところエコツーリズムを重視している。こんな風に始めると「ちょっと待て、エコツアーやらエコツーリズムって何だ?」という声が聞こえてきそうだ。まだ、しっくりとなじんだ日本語になっていないこの言葉の解釈はいろいろある。
西表島エコツーリズムガイドブックによれば「エコツーリズムとは、その土地の自然や生活文化を傷めることなく持続させていくことを活動の最低条件とする旅行のこと。自然保護と観光の両立を求めた結果生まれた旅行のスタイル」ということだし、ごんずい40号で遠藤邦夫は「水俣を360度堪能する」と言った。私は、「人の暮らしが自然や風土とどのように結びついているかを発見する旅」だと思っている。
相思社が目指すのは「水俣病を、起こったことの羅列で説明するのではなく、水俣という土地と人々の暮らしや意識まで視野に入れてとらえ、水俣病の重さや奥行きを感じ、自分との関わりを発見できる」ようなエコツアーである。しかし、それでご飯を食べて行くには、まだまだ需要も修行も足りない現実がある。
さて、環境に対して関心が高いドイツにはエコツアー会社があった。それはどんなものだったのか、その概要を報告したい。
フライブルグ市のウムツアーズ(ウンベルト・ツーリスティック・サービス)は、j.ハーツウィッグ氏とh.j.シュバンダー氏の二人が約2年前に設立した小さなエコツアー会社である。
日本出発前、フライブルグから送られてきたウムツアーズが提供できる視察候補地のリストは、a4版の紙に4枚分という長さだった。その候補地は大まかには、自然観光、農民活動、過疎対策、補償・代替、市民運動という分野に分かれ、その中に環境教育、エネルギー、農家の生産・加工・販売、ビオトーププログラムなどの項目がぎっしり詰まり、数えたら全部で50項目あった。これは、こちらが「こんなところを見たい」というリクエストに応じたものなので、守備範囲や切り口はもっと持っていると思われる。
半日かけて打ち合わせを行い、翌日はハーツウィッグ氏のガイドで、景観保護をおこなう役所訪問、山間部の農家の植物による汚水浄化と木材チップ暖房見学、持続可能な農業研究所を見学することになった。あとの2日間は、半日ガイド同行で、民宿および地域の産物の店舗販売を行っている農家訪問、その他は情報提供やアポイントメントを取ってもらってチーズ生産農家、フランス・アルザス地方のエコミュージアムへ行くことになった。
また、ウムツアーズは、農家民宿や帰りの列車の切符の手配まで行ってくれた。
このようなエコツアー会社が存在する背景には何があるのだろうか。フライブルグ市は、エコメッセが隔年で開かれるなど環境政策の先進都市として知られ、国内及び外国から多くの人が訪れる。ハーツウィッグ氏によれば、エコエネルギーや環境保護などに関するエコツアーの需要は高かったが、役所の担当部局は忙しく、そうそう来訪者に対する案内や説明には関われなかったという。また、ngoにしても外国からの訪問者がアポイントを取って担当者から話を聞くことはそう簡単ではない。ハーツウィッグ氏はそのような状況を見て取り、エコツアー会社を始めたのだそうだ。
エコツアー会社に対し、役所も環境保護への関心が高まることは歓迎しており、ウムツアーズが自分たちができなかったことをやってくれると評価し、情報などは喜んで出してくれるという。また、一つ一つの問題に関する専門家がいても、それらを繋ぐ機能がなければ、限られた時間で多様な客のニーズは満たせない。ウムツアーズは、それに応えることができるネットワークを持っているようだ。
ウムツアーズは、設立以来50〜60団体を案内し、需要は上向きだという。また、ツアーコーディネイトだけでなく、環境政策に関するコンサルタント、自治体への助言、イベント立案なども行っている。
[ドイツの山村と農業]
エコツアーで印象に残ったのは山村のたたずまいと人だった。
1930年代に比べて村の人口は半減しているところもあるということだが、村に残っている人からは、過疎を悲観せず、自分や村にとって最良のライフスタイルを選んでいるという自負が感じられた。
農業では食っていけないという、日本でもよく聞く話はどこでも出た。しかし、「森と牧野のバランスのよい景観をgons保てば観光客がきて金を落とすから、農業をきちんとやることが観光とマッチする」と言う人や「農家自身が加工・販売まで手がけ、経営を多角化する。とても大変だけど楽しいからできる」という話が印象的だった。
また、泊まった農家は、1階が牛小屋、2階が客室と家族の部屋、3階が干し草倉庫という、この地方の酪農家の生活スタイルがよくわかる家だった。ここのおばちゃんは英語を全く解さなかったが、チーズやハム、バター山盛りの朝食を残したときに大きな体を揺すってまくしたてるドイツ語は、「ほれ、もっと食べんね、まこて日本人は少食やが」と理解し、田舎のくつろいだ雰囲気を満喫した。

さて、このツアーのお値段だが、料金は、事前の連絡ではツアーの手配、準備、ガイドで1日8時間から10時間で1グループ700マルク(消費税15%込み)。車使用料や入場料、宿泊、食事代は別。1マルクは約70円だから約5万円である。実際に請求されたのは、何と込みのはずだったコーディネイト料や事務経費まで入れた1400マルク!最後にシビアな値下げ交渉まで経験したエコツアーだったが、相思社の4時間以内8000円(平日料金、車使用料は別)というツアー料金と比べてこの差は何だ?
ドイツのエコツアーを体験した今、言えるのは、ウムツアーズと相思社の案内に質的違いはほとんどない。違いがあるのは、人件費と事前の準備や情報収集といった見えない部分の費用をかなり高く、否きちんと請求するかどうかだろう。
相思社の課題である、水俣病を伝える・水俣病の教訓を具体化して活かす・経営を安定させる、を考えたとき、見えない仕事に対する評価をどう築いていくか、気が弱い人間のまたまた大きな課題ができてしまった。