私たちは不知火海の沿岸に生まれ、育ち、今も暮らしています。それぞれに生い立ちは異なっていても、共通していることは、長い人生の中で水俣病と出会い、言葉には言い尽くせないほどの辛苦をなめてきたことです。
水俣病40年の歴史の中でさまざまなことがありました。しかし、9月28日に与党三党・政府が「水俣病問題の解決について」とする解決案が私たちに示され、それを受けて私たちは真剣に論議をしてきました。そして、10月30日に水俣病全国連が環境庁に回答し、これによって解決案にもられた関係被害者団体のすべてが合意に達し、水俣病の解決にむけて進んでいくことになりました。
合意に至るまでには辛い議論があり、最終的に苦しい選択をしたのです。私たちの要求からすれば、解決案は至って不十分であり、納得しがたいものだったからです。
私たちは要求の柱の一つとして「患者の名誉回復」をかかげていました。言い換えると「水俣病患者としても救済」という事です。政府案にはそのことは明確には記されていませんでした。しかし、9月30日に大島環境庁長官が水俣で「救済を求める人が、いわゆるニセ患者と呼ばれるいわれはないと考える」と明言し、患者の名誉回復の必要性を訴えました。また、今水俣では患者と市民、地元行政が一体となり「もやい直し」(とぎれた絆を結び直す)を合い言葉に水俣病の教訓を活かした町作りが始まっています。ようやく患者と市民との間にあった溝が埋まり始めているのです。
このような状況があったればこそ、私たちは政府案の受け入れを決めたのでした。これをきっかけにして、過去の苦渋の歴史を、その教訓を活かし、新しい歴史につなげようとする壮大な試みが本格化しようとしています。
そのような中で、貴誌11月16日号において「特集『ニセ』水俣病患者 260万円賠償までの40年」と題する記事が掲載されたのです。
私たち被害者のみならず、特定の医療機関を名指しで中傷するなど、その内容は悪意に満ちたものであり、事実をねじ曲げた部分も多々見られます。私たちは満腔の怒りを感じつつも、あえて個別の内容に反論することはしません。なぜならばこのような記事で事実を曲げることはできないであろうし、歴史がこの記事の誤りを証明することを確信しているからです。私たちはこのような誹謗中傷を過去にも受け、今も受けています。私たちは市民の方々や地元行政と協力して、このような壁を越えていくつもりです。
もし、貴誌が心あるならば、このような誹謗中傷記事ではなく、今の水俣の息吹を正しく伝えるような記事を掲載すべきです。事実に基づく、創造的な誌面を作ることが貴誌にとっても未来につながることだと考えます。
以上申し入れます
一九九七年一一月二七日
水俣病患者平和会 会長 石田勝
茂道水俣病未認定患者の会 会長 平木主税
水俣漁民未認定患者の会 会長 滝下松雄
水俣病患者連合 会長 佐々木清登
水俣病被害者の会 会長 竹本巳義
水俣病第三次訴訟原告団 団長 橋口三郎