熊本県議会 議長 倉重 剛 様
環境対策特別委員会 委員長 松村 昭 様
抗 議 文
報道された、九月二〇日の環境対策特別委員会における八浪知行、杉森猛夫、吉本賢児議員らの発言に、私たちは腹の底から怒りを感じています。
昭和五〇年八月、公害対策特別委員会の杉村国夫、斉所一郎議員は、環境庁で水俣病問題についての陳情を行った際、「申請者には補償金目当てのニセ患者がたくさんいる。」と発言し、申請者の怒りを買いました。この事件は名誉毀損訴訟となり、熊本県が敗訴して県知事が新聞紙上に謝罪文を掲載しました。その苦い教訓を、熊本県議会はもう忘れてしまったのでしょうか。
私たちは今回の発言を聞いて、ニセ患者発言の当時となんら変わらない体質を今も持ちつづけている議員がいるのかと暗澹とした気持ちにさせられました。「ブラブラ」のどこが、「生活の状況が分かる的確な表現」でしょうか、「しゃにむに悪くとらんでもいい」などとどこを押したら言えるのですか。被害者の気持ちに対する無神経さもここまでくれば人権意識の欠如です。
「ブラブラ」問題は、一人の申請者が自分の親戚の名前を書き並べた場所に、ブラブラと書いてあることに気づいたことに始まりました。あまりにも場違いな語句だったので、この人はそれが何を意味するのかすぐには理解できませんでした。ところが県職員に問い質すと無職を意味するというのです。県の課長は、「申請者が言うとおりに書いている」と付け加えました。この申請者は、自分が叔父、叔母に対してそんな言葉使いをするわけがないと怒り、当時の記録を探し、県職員に「無職」と書いて渡した記録の写しを見つけたのです。ごまかしようのない証拠をつきつけられ、ようやく部長が出てきて謝罪したのです。
潮谷知事の反応は素早かった。良識を持つ、まっとうな知事さんだと私たちは感心しました。差別された悔しさはそれを受けたものでないとわかりません。「気がつかなかったのは差別意識がなかった証拠」ではなく、差別を差別として感じられなくなっていた証拠なのです。
私たちは、知事の謝罪を評価し、この問題での発言を控えていましたが、議員らの発言を聞き黙っていられなくなりました。プライバシーの問題もあるので私の例で言います。私の母の疫学調書にも「就労状況」の項目に「ブラブラ」と書いてあるのです。本人に面接して書いたようですから、母がそのように言ったかもしれません。しかし、母はこの当時衣類の着脱、入浴に介助を必要とし、食事もさじを使わないとうまくいかず、足のしびれがひどくて歩行も不可能な状態でした。この状態が「ブラブラ」であらわされていいのですか。これが「的確に」状態を言い表している言葉ですか。自分の身内が病に苦しんでいる状態をあなた方はそう表現するのですか。
「ブラブラ」していると書かれた母も、不自由な体を精一杯動かして、家事の一部でも担おうと懸命でした。「ブラブラ」という言葉も、本人が言うときには謙遜などの気持ちがこめられています。しかし、公文書において他人の生活状況を表現すべき言葉でないことは明らかです。ましてや、公害病に苦しむ人々が必死に救済を求めている時に、その人々の生活状況を報告する言葉ではありえないことがわからないのでしょうか。
今回の発言は発言者の県議会議員としての資質を疑わせます。しかし、それ以上に熊本県議会が今まで水俣病に取り組んできた歴史に泥を塗るものです。私たちは、県議会が良識を示し、発言者に発言の撤回を促し、全水俣病被害者に謝罪するよう求めることを強く要望します。
平成一二年九月二二日
水俣病患者連合 会長 佐々木清登