四月二七日、大阪高等裁判所において判決が下された水俣病関西訴訟について、次のことを要望いたします。
私たちは平成七年の政府解決策にもとづき、貴社と協定を締結いたしました。新聞報道等でご存じのように、私たちはこの解決策に納得していたわけではありません。長くつづいた闘いの中で、多くの仲間が、命尽き、床に伏していました。不十分な解決策であっても、限りある命を持つものとしてぎりぎりの選択をせざるを得なかったのです。また、「もやい直し」事業を初め、地域で患者を受け入れようとする機運が生まれていたからでもありました。
関西訴訟の原告は、様々な理由で故郷の不知火海を追われ、遠く関西の地で病に冒された身と差別偏見の中で心身共に耐え難い労苦を背負い、致し方なく訴訟に及んだものです。提訴から一九年、すでに原告五八名の内二〇名までが闘い半ばにして命を失っています。今、もし、貴社が上告をすれば、原告患者・家族・遺族はさらに苦痛を強いられることになります。このことは人道上も許されるものではありません。
一方、水俣病の教訓を生かすべく、様々な事業が行われています。そういった中で、徐々に水俣病の実体が明らかにされ、少しずつではありますが、私たち水俣病患者たちに対する偏見差別も減少しつつあります。こういった動きの中でもしも上告となれば、今までの努力が水泡に帰すおそれもあります。
水俣湾の汚染魚介類が水俣病を引きおこし、貴社の排水がその原因であるという事実を把握しつつも、担当者の英断がなかったばかりに、解決を長引かせ被害を拡大させたことは水俣病の歴史の中でも明らかです。水俣病の教訓を生かし、今こそ貴社のご英断を望みます。
要 望
一、 国・熊本県・チッソは判決の趣旨、原告患者らの実状、環境行政のあり方、被害地域における「もやい直し」事業の推進などに配慮し、上告権を放棄し高等裁判所判決に従うこと。
平成一三年四月三〇日
水俣病患者連合 会長 佐々木清登