環境大臣 小池百合子 様

要 求 書

二〇〇四年一二月三日


水俣病患者平和会   会 長 井島 政治
水俣病患者連合   会 長 佐々木清登
水俣病被害者の会全国連絡会   代表委員 森 葭雄
幹事長 橋口 三郎
新潟水俣病被害者の会   会長 樋口幸二

はじめに

 去る一〇月一五日、最高裁判所は国と熊本県に水俣病の発生と被害拡大を防止できなかった行政責任があると判断し、国、熊本県が「損害賠償責任を負う」と判決しました。これは二三名の犠牲者を積み重ねながらも果敢に闘いぬいた「チッソ水俣病関西訴訟原告団」の、文字どおり命をかけた訴訟の結果です。私たちはこの要求書を提出するにあたり、「チッソ水俣病関西訴訟原告団」(以下、関西原告団)のみなさまに心からの敬意を表明し、また道半ばにして逝去された原告の方々のご冥福を衷心よりお祈り申し上げるものです。
ところで、私たちも、政府解決策に応じチッソとの協定書を結ぶにあたって、最後まで国・熊本県が水俣病における行政責任を認め、該当する患者を水俣病とするよう求めてきました。また、政府解決策による解決後は、現行の認定患者に対する補償を滞りなくすすめることや総合対策医療事業の継続と拡充を求めて三団体共同して取り組んできました。今回の判決は、そうしたこれまでの被害者運動総体の成果でもあります。国・熊本県は判決を率直に受け取り、加害責任を適切かつ早急につぐなうべきです。
これまでの経緯を踏まえ、認定患者や総合対策医療事業対象者が生涯にわたって安心して療養できることを前提に、今後の水俣病患者救済のために行政が何をおこなうべきか、私たちからの提案を要求書としてまとめました。
これらの内容の実現にむけて迅速に取り組むことを求めます。
 

一、全水俣病被害者に対する明確な謝罪を求めます。

 最高裁判決は水俣病被害拡大の責任を国、熊本県について明瞭に認めているにもかかわらず、国・熊本県の謝罪はきわめて不明瞭です。誰に対して何を謝っているのか肝心の点がぼかされています。
 国・熊本県は関西原告団に頭を下げながら、それらの被害者を「水俣病患者」とは呼びませんでした。水俣病第二次訴訟において、昭和六〇年、福岡高裁で明確に水俣病と認められた原告についても水俣病患者と認めていません。二三〇〇名に及ぶ認定患者や解決策に応じた私たちにどう謝罪するのかもまったく明らかではありません。
 また、熊本での水俣病に適切に対応していれば当然のこととして防ぐことのできた新潟水俣病には全くふれていません。
 国・熊本県は私たちをも含めて全水俣病被害者および国民に対し明確な言葉で謝罪すべきです。

二、全水俣病被害者救済、被害地域援助を見すえた特別立法の策定を求めます。

 環境省、熊本県は最高裁の判決を受けながらもいまだに昭和五二年「判断条件」にこだわっています。このようなありさまでは勝訴した原告患者さえ救済することはできません。水俣病と判断するための基準がいくつもあるような状況は被害者として許せません。こうした混乱を整理し、水俣病被害者の真の救済を実行するためにも、国と熊本県の責任を前提に、全被害者を網羅することのできる水俣病被害者救済特別立法が今こそ必要になっています。
環境省は解決策に応じた私たちを楯にとって関西訴訟原告患者の医療救済要求を拒否しましたが、これは人の道にもとる対応です。来年は新潟水俣病公表から四〇年目であり、さらに二年後には水俣病公式確認から五〇年を迎えます。それだけに今回出された最高裁判決には非常に重い意味があります。環境省、熊本県はむしろこれをよい機会として水俣病事件を真摯にふりかえり、正すべきは大胆に正して水俣病半世紀を総括すべきです。

三、水俣病被害者、被害地域の総合的調査を実施し、水俣病被害の実態を把握すべきです。

 今回の判決により、国・熊本県にはチッソとならんで水俣病被害者を救済すべき法的義務が生じました。まず実行すべきは被害の実態把握です。新たに救済を求めている人々に対し、早急に対応すべきです。医学的な水俣病像の是正を目指す調査は当然なされなければいけません。認定申請中の被害者についてもあらたな対応が必要となっています。さらに、行政認定患者の生活実態はどうなのか、裁判原告患者の補償はいかにあるべきなのか、政府解決策患者のおかれた状況はどうなのか、有機水銀汚染の広がりはどのような実態にあるのか、水俣病被害で疲弊した地域をどのように援助するのかなど、はっきりとした目的を立てすみやかに調査を行うべきです。それが特別立法の内容にもつながります。
 こうした調査は、今まで心ある少数の学者によってのみおこなわれてきました。遅きに失するとはいえ、行政がこれまでの失政をつぐなうことのできる、おそらく最後の機会が来たのです。この時を逃すなら水俣病の教訓を発信するなどという言葉は二度と使えなくなります。最高裁は実にすばらしいチャンスを与えてくれました。あるべき行政の姿をめざし一歩を踏み出してください。

四、関西訴訟原告患者、二次訴訟原告患者の医療救済は、水俣病とされている以上、人道上も緊急の課題です。ただちに取り組み実行してください。

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