環境大臣 小池百合子 様

要 求 書


昨年一〇月一五日の水俣病関西訴訟最高裁判決において、国と熊本県の賠償責任が確定しました。そして、最高裁が「大脳皮質の損傷による感覚障害だけでメチル水銀中毒と認めることができる」という高裁判決を支持したことにより、症状の組み合わせを求める国の認定基準は事実上否定されたのです。
 この判決以降、熊本県や鹿児島県に対する水俣病認定申請を行う人が急増し、三月一〇日にはその数が一,〇〇〇人を超え、その後も増加し続けています。その八五%が初めての認定申請であり、一九九五年政府解決策で「保健手帳」の給付を受けた患者がそれを返上してまで認定申請に踏み切った人が一〇〇名を超えています。
これらの事実は、環境省などが現行の水俣病認定制度に固執するだけでは、水俣病被害者の全面救済を実現できない事を明らかにしています。と同時に、一九九五年の政府解決策も最終全面的な解決になっていないことも明確にしています。すなわち、一つは政府解決策の時点においても救済を名乗り出られなかった多くの潜在患者が存在していたという事実であり、もう一つは保健手帳の給付内容が至って不充分なものであり、被害の実体や患者の要求と大きな隔たりがあることです。
保健手帳の該当者も有機水銀の影響をうけていることは間違いなく、充分な医療を必要としています。新しく認定申請に踏み切った人々の最低限の要求も医療費の全面支給です。
昨年一一月二九日に熊本県は独自の水俣病対策案を提示しました。この中で、水俣病被害の実態把握のための調査が必要である事を指摘しています。私たちは、水俣病問題の全面的解決の前提としてこの調査は必要にして不可欠と考えています。 
その後、主に環境省と熊本県との間で新しい水俣病対策についての協議が続けられています。しかし、三月一〇日の環境省事務次官の発言などを見る限り、保健手帳該当者への事業については拡充を考えているものの、被害実態の調査はもちろん被害者の最低限の願いでもある「医療費の全額支給」とはほど遠いものとなっています。
また、報道によれば、医療事業受付の再開も予定されているとのことですが、内容は保健手帳のみであり、医療費の一部の支給となっています。
もし、このような最高裁判決の意味を無視した施策を実施するならば、多くの被害者が再び訴訟に踏み切らざるを得なくなり、被害者はさらに長期間にわたって苦しめられることになります。
また、政府解決策をきっかけに進められてきた「被害地域の再生」、「もやい直し」も水泡に帰す可能性さえはらんでいます。
私たちはこうした事態を見過ごすことはできません。私たちは、長く苦しめられてきた水俣病被害者として次のことを要求します。

要求事項

一 現行の水俣病総合対策医療事業を患者団体などの意見をよく聞いて充実すること。とりわけ保健手帳対象者に対して、医療費の自己負担分を全額保証すること
二 水俣病医療事業の受付を再開するにあたっては、最低限の施策として医療費の全額支給を保障すること。また、一九九五年政府解決策との整合性を保つためにも、保健手帳だけではなく医療手帳の窓口も再開すること
三 関西訴訟原告及び二次訴訟元原告に対し、速やかに医療費を支給すること
四 一九九五年一二月一五日に閣議決定された「総理大臣談話」を見直し、行政責任を明確にしたものに変更すること
五 水俣病被害の実態調査を前提に、全ての水俣病被害者を迅速かつ正当に救済することを含む全面的な解決につながる特別立法の制定をすること
以上

二〇〇五年三月二二日

チッソ水俣病関西訴訟原告団 団長  川上敏行
水俣病被害者の会全国連絡会 代表委員  森 葭雄
幹事長  橋口三郎
水俣病患者連合 会長   佐々木清登
新潟水俣病被害者の会 会長  樋口幸二
水俣病不知火患者会 会長  大石利生
水俣病互助会  会長  上村好男





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