IWD東亜熊本「住民等の意見の概要と事業者の見解」の問題点について
IWD東亜熊本が平成19年11月21日に提出した「準備書意見概要及び見解」の問題点を指摘します。この見解書は、杜撰を通り越して単なる「作文」にすぎません。見解漏れや、意見に対応していない見解になっているものなどを全面的に見直させ、事業者に再提出を求めるべきです。 (1)意見そのものが取り上げられず、従って見解も示されていません住民等の意見書は、水俣市民はじめ周辺自治体や全国各地から33,591通という膨大な数が寄せられました。その数もさることながら、内容も多岐にわたっています。しかし、事業者がまとめた「準備書意見概要」に意見そのものが取り上げられず、従って見解も示されていない項目が多数あります。全てを上げることはできませんが、以下のような意見があります。・「処分場予定地内での水俣市の立ち入り調査を認めるべき」 ・廃棄物の搬入について「風速何m以上ならば自主的にトラックからの廃棄物を下ろす作業を中止させるか基準を教えてほしい」 ・搬入路で「現在平通りを通っている大型車類のほとんどが4トン以下で、貴社の事業によって増加する車両のほとんどが10トンダンプということならば、4トン車と10トン車は分け(て調査し)なくては意味がない。」 ・湧水で「「地下水」「湧水」「沢水」「表流水」はそれぞれ位相の異なった概念であると言え、それをごちゃまぜにして「湧水」か「沢水」か「地下水」か「表流水」などという判別に用いるということは、根本的に誤りである。」 他にも多数の意見が抜け落ちています。まったく取り上げられていない項目と、次に述べます、一部しか取り上げられていない項目を合わせると、分かっているだけで441項目あります。 事業者であるIWDは、熊本県環境影響評価条例第18条の規定に基づき、意見の概要及び事業者の見解を記載した書類を知事及び水俣市長に送付しなければなりません。提出された意見が「意見の概要」に含まれていないのは条例違反にあたります。事業者は、制度上きちんと見解を示す義務があります。熊本県は、未回答意見に関しては、速やかに事業者に提出するよう指導すべきです。 (2)意見が一部しか取り上げられていなかったり、歪曲されているものがあります。意見が取り上げられていても、意見の一部しか取り上げられていないものもあります。例をいくつか挙げます。 ・No.62 内部貯水「1993年程度の降水があれば内部貯水を行うということを設計の前提としているのは、国の指針に反する。内部貯水を必要としないように 浸出水調整池及び浸出水処理施設を設計するべきである。」という意見は取り上げられておらず、見解もありません。 ・No.136 予備ルートの調査については、「予備ルートに関しては調査が行われていないが、影響を予測・評価する必要がある。今後通行の予定があるならば、予備ルートであっても当然調査を行わなければならないはずである。予備ルートの袋方面の農面道路は現在10トンダンプが通行することが物理上難しいが、どうするつもりか?」というような意見にまとめられていますが、これは元々は途中に「このままではアセスを行わないまま事業が実施されることになってしまい問題である。」という一文と「整備が予定されている袋インターとの関係も含めて説明が必要である。」の一文が挟まっているのですが、IWDがまとめた「意見の概要」では虫食い上になっています。 このような編集は不自然で、厳しい指摘や自己に不都合な意見を、意図的に落としたと疑われても仕方ありません。このような例は枚挙に暇がありません。 (3)意見に答えていなかったり、答をすり替えたり、はぐらかしています例えばbR6の「計算式を示せ」に対しては計算式が示されていないし、bQ48は「事業者の用語使用の根拠」を聞いているのに、一般的な説明しかしていません。No.183「『当該指摘図面のその他の箇所』は『確実に湧水でない』と断定されたのか。」に対する見解の「沢や地表を流下している水であり、確実な湧水とは考えられません。」に至っては、何の冗談かなという感じです。「湧水でないと断定できるのか」という質問ですが、回答は「確実ではないということが断定できます」という具合で意味不明です。 このような不真面目な見解を、恥ずかしげもなく県に提出してきたIWD東亜熊本が、まともな事業が行えるとはとても考えられません。 (4)見解が将来に先送りされています。処分場施設やその構造に関することなどについては、bR5、bS0など多くが「詳細は、今後の県関係当局との協議により決定」するとして回答していません。bQ32「評価書で検討・記述」するとありますが、本来、見解書で見解を示すべき事項を、今後の協議や評価書作成時に先送りしているのは、見解書とは言えません。また、「熊本県関係当局との協議により決定します。」という文言がとてもたくさん登場します。本来、環境影響を予測するために必要な事項が、「県との協議」として先送りされています。 そこで、熊本県は、IWDと事前に十分協議を行い、地域の環境に影響・被害を与えないよう、厳しく指導するとともに、その結果を市民に公表し、説明会を開催して、住民の不安や疑問を解消するよう努力を尽くしてください。 (5)準備書の記載内容や説明を繰り返したに過ぎないものがあります。そもそも準備書に対する意見や質問であるのに、これに対する答えが準備書の記載内容や説明の繰り返しに過ぎないものが多数あります。端的な例を挙げますと、・No194大森集落の井戸についての意見に、「準備書のp.459に記述した通りです」との回答ですが、住民は、追加・補足説明や詳細な説明を求めているのに、「準備書に記載のとおりです」では、事業者としてあまりにも不親切であり、木で鼻をくくった見解です。準備書縦覧期間も過ぎているし、準備書をコピーしてはいけないと言われたので、その内容を確認することもできません。 (6)住民への不誠実な態度が明らかです先ほど述べたこととも関連しますが、住民無視の姿勢は明らかです。・No.222の地質「ボーリング柱状図や、ボーリングコアサンプルが一部しかない。」に対しても、見解は「すべてのボーリング柱状図は水俣市当局および熊本県の審査会に提出され、コアも閲覧されています。」となっていますが、ここでも住民は蚊帳の外です。 見解書は条例では市や県に提出することになっていますが、住民は自分の出した意見に対する見解を知りたいと思うものですし、今時は情報開示請求をすればいつでも見ることが可能です。IWDのいう「誠実」が本当であれば、このような住民無視の見解は出てこないのではないでしょうか。住民無視の姿勢が明らかです。 (7)事実を曲げて記述しています。・NO.178湧水と沢水や表流水の判断の根拠についての意見に対して、事業者見解では「4月9日の現地調査によって明らかになりましたように、当該地元住民が主張するような500〜600トン/日の湧水は確認されませんでした」と答えているが、これは事実と異なっています。4月9日に行ったのは湧水地点の確認であり、湧水か否かを住民と事業者とが相互に確認しあうようなことはありませんでしたし、湧水量の計測もしていません。1回目の説明会では、処分場予定地直下にある大森地区の湧水を巡って、地元住民の質問に対してIWD東亜熊本が明確な説明がほとんどできず、IWDはこの理由を「湧水点の認識の誤解」としました。そのため、住民立会いのもとで湧水点の再調査を行ったのです。明々白々な事実であり、裁判ならば偽証となりましょう。事情を知らない審査委員の先生方を騙そうとする意図が明らかです。当日立ち会った住民はそれぞれ4月9日のその様子をより詳細に証言することが可能です。その他にも、事実と異なる記載が見られます。 (8)方法書に対する県知事意見に答えていない、という指摘に答えていませんこれはすなわち、県知事意見で指摘した事項について事業者は改善する気はなく、さらに「県知事意見の指摘事項が改善されていない」という指摘については、徹底的に無視する姿勢であることを示しています。事業者はアセスメントの精神である「よりよき事業」を行おうなどと微塵も考えておらず、住民のみならず、県知事をも愚弄しきっているということを如実に示していると言えます。(9)見解書への再質問となるべき意見がすでに住民意見の中にあります。たとえば、見解書のNO.144に「雨時の流量の測定は行ったのか。」に対して、「降雨時の流量の測定は行っていません。」という見解があります。しかし、IWDが見解書で取り上げなかった住民意見には「なぜ降雨時の水象調査を行わないのか」という意見がありました。見解書では、むしろこちらの意見を取り上げるべきです。そうすれば上記のような見解はありえません。不自然です。何か不都合なことがあったのでしょうか?また、No.236で「B-1は宙水」と見解しているが、「いったいどんな理由があって「安定した地下水位」でなく「宙水」の流向を測定したのか。」という意見は抜け落ちています。 No.173の見解には「野川・長崎集落は、処分場予定地との間に存在する鹿谷川よりも標高が高く、処分場方面から地下水が流れて行くことは考えられません」とあります。しかし、意見にこれに反論する意見が、住民意見の中にすでにありました。「野川地区の水道水源は湧水ではなく、200mボーリングした地下水であり、処分場の下流となり影響を受ける。」というものです。事業者はこれを含めて回答していなければならないはずです。都合の悪い意見をあえて落としたとしか思われません。 (10)抽象的な言葉でごまかしています。見解書No.43で搬入路の平通りについて「現地調査において、林業の伐採木運搬車両である10t以上のトレーラー車も頻繁に走行しているとともに、対象事業実施区域北西側で行われていた土木工事車両の10tダンプも多数走行していた事も確認されていることから、埋立物運搬車両の通行は可能であると考えております。」と答えています。しかし、「頻繁」「多数」とはどれくらいのことでしょうか。一日100台でしょうか、3日に1台でしょうか? このような見解は、抽象的で中身がありません。 No.111大気の「風速の計算の基礎値が平均風速のみであるため、環境への最大負荷が不明」という意見があります。平均風速は10分間の平均のことで、突風も平均値にならしてしまうので、焼却灰の飛散を予測するには、最大風速や最大瞬間風速を用いなければなりません。IWDの見解では「分かりやすいように『平均風速』で表示しております」とだけ答えていますが、なにがどう分かりやすいのか、これでは全く分かりません。抽象的で中身のない回答です。 (11)準備書と見解書の記述が矛盾していますたとえば、見解書No.278で、下流の冷水水源への影響を心配する意見に対し、「鬼岳火山岩類は連続した溶岩ではなく、複数の噴出口または割れ目から時代を置いて噴出した溶岩等から構成されており、連続はしていません」と答えています。しかし、そうすると準備書の地質平面図および地質断面図はに水平層が広く分布していることや、地層全体が西に傾いているため大森には湧水しないというような記述と根本的に矛盾しています。(12)「水俣病」についての見解がありません。住民の多くが、「水俣病」に対する事業者の認識を尋ねる意見を提出しています。しかし、「水俣病」は、事業者見解中に一言も出てきません。
以上、述べたように、IWD見解書は、恣意的な取捨選択と、適当な作文でしかありません。 |