|
3月11日に湧水に関する住民の質問に答えられず、再調査と説明会のやり直しを約束したIWDは、5月13日、2回目の説明会を開催した。
□3月11日の説明会のレポート
予想どおりIWDは万全の準備で臨んできた。
ついにIWDの本性が明らかになった。
午前10時から午後4時という一日がかりのスケジュール。
高齢者は座っているだけでもしんどい時間設定の中で、途中1時間の昼食休憩を挟んだ以外は、トイレ休憩も行わない。しかし、集まった900人は、ハードスケジュールにめげず、最後まで一体となってIWDを追及した。しかし、IWD側は予定時間の16:00が来るやいなや、説明会を打ち切って逃げ去ったのである。
5:00 起床、身支度。
7:20 有志の女性たちでお昼に参加者の人たちに配るおにぎりを握る
9:50 文化会館の入りは8割程度で約800人。半日の人はなるべく午後に来るようにと言っておいたので、まあまあの入りか。託児があれば長くいられるのだけれど、と言っていたお母さんがいたので、託児を用意していなかったのが残念だ。
10:00 開会。まず司会が挨拶。
司会のことでは前回揉めたため、IWD側は「中立的な第三者」として、北九州市立大学教授大学院国際環境工学研究科教授の乙間末廣氏に司会を依頼したのだという。
乙間氏の第一印象は柔和な感じ。だが、最初の挨拶では、「アセス準備書の技術的内容について説明する場で、設置の妥当性についての質問をする場ではない」という認識を披露した。会場からちょっとしたブーイングが起こる。
それにしても、この乙間氏がとんだ食わせ物だっだ。
10:20 社長挨拶の後、アセスを担当するNPO法人環境技術協会の田邊裕正氏が説明をする。前回平林さんに喋らせて失敗したためだろう、今回は田邊氏一人で大部分の説明・質疑応答をこなした。
前回の説明会で指摘され、再度、立ち会いで場所の確認を行った「湧水」について、図を使って説明する。要点のさっぱり分からない説明であったが、午後の質疑で分かった部分も含めて、とりあえず田邊氏の主張をまとめてみる。
(1) 沢水とか湧水とか地下水とかは表現がいろいろあってはっきり言えない」(ということは、準備書に各湧水きちんと表にして「地下水・表流水」と分けているのは、分からないものをいい加減に分けて書いたことになるが)
(2) ボーリング孔の地下水が、水位の低い方から高い方へ流れているように矢印で図示してある点については、流向を測定した場所は、安定した地下水位の上にある“宙水”だった。
(そんなものの流向を計ってどうする。なぜ安定した地下水位で測定しないのか)
(3) 有名な水源は1分間にトン単位で湧いている。そういう水源を“湧水が豊富”と言っているので、下田さんの水源は湧水が豊富ではない
(他の水源と比較して何か意味があるのか。実際に湧水の水を飲んで生活している人がいるということが重要なのだ)
(4) 地盤が西に10度傾いているから地下水は東側の大森地区には出ない
(その証拠は何も示してい。ボーリングでも明らかになっていない)
(5)要するに遮水工があるから問題ない
(それで問題が起こっているんだぞ)
このように田邊氏は言いたいようであった。個別の事実は合っているのかもしれないが、結局は本質的なこととは関わりのない誤魔化しである。
また、地質に関して、気になった項目を上げてみる。
(1)地盤の強度を示すN値は処分場の底面までしか測っていない。
(2)鹿谷川の流量が少ないのは、一番上が不透水層になっていて保水力が低いためである。(逆だろう。意味不明である)
(3)大森側は「受け盤」なので崩れにくい。(嘘だろう。実際に崩壊している場所がある)
11:00 次にIWDは前回の質問ボックスに住所氏名を入れた質問者予定に対し、IWDが事前に質問を提出するようにと要請し、質問が返って来た分への回答を行ったのだが……。
いきなり前方スクリーンに、質問者の名前がデカデカと映し出される。
個人情報保護が問題になっている昨今、あまりの非常識に驚愕。
ほとんど見せしめである。
質問内容は具体的なものもあったが、「水について」「地質について」等の項目だけの質問も多い。「会場で質問する」「正誤表が出たら質問する」というのもある。
田邊氏は殊勝にも「回答が皆さんのご質問の意図と合っているかどうか分かりませんので、追加で質問があれば午後お受けします」と言った。(しかも、何度も言った)
ちなみに田邊氏、「動植物調査の聞き取りをした県の委員の名前を教えてください」との質問には、
「本人に名前を出していいか聞いてみないと…」
(住民には名前を出して良いか聞かなかったくせに!)
12:30 田邊氏の説明が終わり昼食休憩に入る前に、市民会議のメンバーが、「会場で質問すると言った人の分や、質問に的確に答えていなかった分は、時間を区切らずにちゃんと質問させてもらえるのでしょうか?」と質問。
司会の乙間氏は「進行については午後の部の最初に提案したい」と回答した。
昼で帰ってしまう住民もいるかと心配したが、住民はほとんど帰らず、ロビーや外で持参したお弁当や、地元の加工場が販売に売りに来たのお弁当を食べた。私たちが握った無料配布のおにぎり150個は、すぐにはけてしまうかと思ったが、ほとんどの人が弁当を持参したりため、残ってしまったのは嬉しい誤算。
13:30 午後から参加する住民もいて、午前よりも若干人が増えたようだ。
午後の部は、代表者質問の予定になっていた。
ここで司会の乙間氏が
「質問の申し込みをされた方以外で、会場で質問したい人はどれくらいいますか」と尋ねる。会場から何人かの手が上がったので、「この人たちの質問も受けたいと言う。」
午前中最後のやりとりから「質問が多いので時間制限をする」と言われるかと思ったが、乙間氏は「3時までは市民会議の代表者質問、その後は会場からの質問を受け付け、その後に代表者質問を再開する」という提案をしてきた。
胡散臭いとは思ったが、しかし騒いだと言って打ち切られても困るとの考えで、一応、その申し出を受け入れた。結果から言えば、「信じた私たちがバカだった」とも言えるし、いろいろなことに思いを巡らせすぎたとも言える。
13:40 IWDは前回の反省から、「マイクを持たせない」「通路に出て質問させる」という方針できた。「足が悪い人もいる」と言えば、「パイプ椅子を用意します」と用意周到だ。
最初に、水俣市産廃対策室の福田氏がパワーポイントを使い、水質分析結果を図式化したヘキサダイヤグラムに表し、大森の水が湧水であり、台地全体が同じ水であることを説明する。一目瞭然の説明に会場から大拍手。
続いて前回に続いて、下田保冨さんの質問となったが、午前中同様、湧水とか沢水とかはっきりしないものなので、云々かんぬん」(実際はもっと回りくどい言い方をしている)と言ってゴマかす。しかも、今回は向こうの担当者がマイクをしっかり握って離さないいるため、遠藤&下田コンビの連携プレーも封じられてしまう。のらりくらりと回答を避けられて、みんなヤキモキする。
そして、遠藤にバトンタッチ。
「マイクは僕が持たせてください。マイクを持たれていると話がしにくいんです」と言って、やっとマイクを持たせてもらった。
司会の乙間教授は、回答を促したり独自の解説を入れるなど学者らしいところ、第三者的なところを見せ、「あれっ、この人は本当に中立なのかな」と思わせたが、後から思えばこれが質問者がIWD側へ投げたボールに対する、よいクッションになっていたのだ。
とりあえず、問題点が「湧水量だけでなく、生活に使っているという事実である」ということに対しては田邊氏の首を立てに振らせたが、その他は前にまとめたとおりの曖昧回答。質疑は一向にかみ合わない(このとき、遠藤は日頃と違って少し紳士的にやろうと思ったようだが、あとでそれは間違いだったと気がついた。相手はちっとも紳士的ではなかったのだから)。それはどういう意味なのか、というようなやりとりが続くなかで、核心部分に入れぬまま、また、山ほど用意していた質問も残ったまま、3時になってしまう。
(このことで私が気落ちしていたら、「よくやりましたよ。裁判であれなら向こうの心証はかなり悪いですよ」と慰めてくれたのは、いつも溝口認定棄却取消訴訟を傍聴している相思社のS職員である。)
15:00 一旦区切って会場からの質問の時間にというので、「残った質問にはちゃんと答える」と約束で、一旦質問を中断する。
会場からの質問も鋭いモノがあった。
一つは、主要搬入路となる平町の自治会長の質問で、
「平通りはとても狭い。自分も大型車を避けようとして車を壊したことがある。もしそこに人がいたらと思うと怖いがどうなのか?」
会場からは大きな拍手。
田邊氏は、ダンプが走っている写真を示してきちんと調査をしたことをアピールした。しかし、会場からは思わぬ(?)大ブーイングが起こる。
「場所が違うぞー」
「そこは3号線じゃがー」
「平町じゃなか。旭町じゃがー」
なんと写真は狭い平町ではなく、少し離れた3号線への出口を写していたのだ。地元住民が気づかないわけがない。
「調査をやり直しなさーい」
田邊氏「ここは平通りの入り口でしょう」
「平通りはもっと先じゃ」
「入り口と言えば熊本市だってどこだって入り口じゃがー」
田邊氏は「調査はきちんと行いました」の一点張り。そのとき、
「これが平町です!これを見てください」
後方から白い模造紙を持った女性が駆け下りてくる。ステージ前の通路で黒づくめの男らが阻む。
模造紙に貼ってあったのは「水俣に産廃はいらない!みんなの会」が3月に実際に10トンダンプを平町で走らせて撮影した写真だ。会場の外で展示していたのである。
その写真を見れば、平通りはとてもダンプが日に55台も通れるような広さはない。10トンダンプ同士なら離合は不可能な狭い道である。
乙間氏が「私が受け取ります」と言って模造紙を受け取り、社長にさっと見せる。
IWD側は「調査はちゃんと狭い部分で行っています。」と言う。
乙間氏は「私はこちらの専門ですが、交通量はどこで測っても同じですが、通りやすさは違いますね。事業者の方、どうですか?」
とちょっと住民寄りっぽい発言をする。
これが曲者だったのだ。
(ここで突っ込みを入れたかったのだが、指名権があちらにあるというのは厄介である。IWDは狭い部分で調査などしていないし、交通量はどこで測っても同じ、というのは、枝分かれのない一本道であれば、という話である)
しかし、乙間氏は田邊氏の曖昧回答に特につっこむわけではなく、「違う質問に行きませんか」と強引に振ってしまった。
もう一つIWDが動揺したであろう質問は、「地下水が西に行くと言ったが、それなら西にある茂川・野川地区の井戸は危ないのではないか」というものである。この質問には、ついに田邊氏も開き直って「調べていません」と断言する。
会場から「再調査を」と叫ぶが、田邊氏も司会も聞く耳は持たない。
乙間氏は適当に指名しているように見えて、市民会議の主要メンバーには絶対に当ててこなかった。後で知ったが、しきりに場内を撮影している人が2人ほどいたという。うるさそうな人間を逐一チェックしていたのだろうと思われる。
15:50 まだまだたくさんの手が上がっていたが、司会は、続けて2人を指名した。
最初の質問内容は「雇用はどうなるのか」。
また二つ目の質問者は、要約すると「水俣だから産廃はいらないというのはおかしい。四日市にも富山市にも管理型処分場はある。だから水俣にも作るのは賛成。市民にも市民会議以外にいろいろな人がいる」というものである
(四日市の事を引き合いにして産廃賛成とは、「産廃は作らせたら大変なことになります」と言っていろいろ資料を送ってくださった四日市の方に面目なく、腸が煮えくりかえる思いだ)
会場から一斉に怒りの声とブーイングが上がる。
アセスとは全く関係のない内容だったが、司会は制止しようとしなかった。
それに対して反対住民の一人が話し始めると、いきなりマイクの音声を切る始末。
時間はちょうど16時を回った。
16:00 「時間になりましたが、どうしましょうか」と乙間氏が小林社長に聞きに行く。(まさに「聞く振り」をしただけなのだが)
「まだ質問が残っているぞ」
「答えると約束したじゃないですか!」
小林社長が無言で頷くと、乙間氏、さっと踵を返して、
「では、時間になりましたので終了とさせていただきます」
その素早いことと言ったら!
「約束と違うぞ!」
「ちゃんと答えると言ったじゃないか!」
住民はステージに押し寄せるが、黒スーツの人たちに阻まれる。
「危ないですよ」と言葉は丁寧だが押しは強い。喧嘩じゃ勝てそうにない。
すべてが出来レースだったわけだ。
司会は、初めからこれだけを狙っていたのだ。
「肝の据わった御用学者というのはこういう人のことを言うのだなぁ」
あまりの作戦の巧みさと、乙間教授の学者には勿体ないほどの演技力に、お人好しの市民は最後まで本当に中立なのか、業者側なのか見分けがつかなかったのだが、事ここに至って、乙間氏が「中立な第三者」などでは決してなかったことが、明々白々となった。
IWDは逃げた。
前回は多少なりとも善人的な狼狽を見せていたIWDは、今回はなりふり構わず強行姿勢出てきたとも言える。悔しくはあるが、少なくともIWDの姿勢は明らかになった。
16:20 住民側は会場前でミニ集会を開く。
今日の説明会でIWDの本性が分かったこと。
つまり、IWDは説明をする気など毛頭ないこと。
しかし、法律では事業者は住民に対して説明する義務があること。
県に働きかけをして、きちんと説明するよう指導してもらわなければならないこと。
そのためには多くの住民の行動が大事なこと。
まだまだ、闘いは始まったばかりだということ。
などが話された。
住民はみな頭から湯気を発してはいたが、顔は明るかった。
今回はIWDも周到に用意を進め、1度目の説明会のようにはいかなかった。しかし、IWDが強引に幕引きを図ってきたことで、彼らの不誠実さは浮き彫りになった。今後も、住民が一丸となって行動していくとともに、科学的な見地からIWDの計画の不当性を明らかにしていきたい。
追記
17:30 その後、なんやかんや周囲と話をして分かれようとすると、「こっち来て」との声。住民の一部が文化会館を出た社長らを追いかけていたらしく、10人ほどが去ろうとするワゴン車を囲んでいた。
若い女性らが目に涙を浮かべて車の前に立ちはだかっている。
IWD側は社長と司会は後部座席に座り、窓もカーテンも閉め切ったまま。
住民は応対を求めたが、専務が勝ち誇った顔でニヤニヤ笑いをするだけ。
17:40 まもなく警察がやってきた。IWDが呼んだらしい。IWDが警察に勝手な説明をしようとするが、住民が説明会の経緯を説明すると、警察官もどうしていいやらと困惑顔。
18:00 しばらくの膠着状態ののち、刑事さんが仲介に立ってくれたが、それでもワゴン車側は拒否。回答は求めない、申し入れだけでも、と刑事さんが言っても窓も開けようとしない。「こうしていても仕方ないから帰りましょう」と住民らは帰途についた。
(産廃処分場と闘っている皆様、どうぞアセス説明会の業者の手口を覚えておいてください)
|