写真集『MINAMATA』復刻刊販売 先行受付中

出版社から許可をいただき、46年ぶりに復刻された写真家ユージン・スミスさんとアイリーン・美緒子・スミスさんの共著作写真集『MINAMATA』の販売を先行予約の受付をただいまから開始します!

今年に入って、アイリーンさんのインタビューをしました。それはそれは長い時間がかかって。彼女が物事の細部にまでとことん心をくだいたことがその理由です。でもユーモアも忘れずに、文字起こしと編集をして、出来上がってみたら、とっても面白い文章になりました。例えば熊本名物の「からし蓮根」(※)を食べないと一日が始まらなかった話や、男が変わればテーマが変わるというあっさりとした発言や(記事は、水俣病センター相思社の会員向け機関紙「ごんずい」の前号と今号で読めます)。

そんな彼女と、離婚した夫のユージン・スミスが撮った150点の写真が収録された写真集です。暮らしに欠かせない茶を炒る写真や、夫婦舟で魚をとる写真(まだ水俣の海が汚染されている頃です)。ユージンが患者たちとの宴会でふざけていたり、借家の仏壇で水俣病に奪われた我が子に手をあわせる父の写真や。かと思うと、チッソ(現JNC)前での交渉や、裁判の判決や、患者がチッソ(現JNC)社長に対話を求め向き合う場面や。チッソ(現JNC)が排水を流す現場や、汚染された海などのシリアスな場面も撮影されています。

それぞれの写真の解説は、ユージンが目の前で見たこと触れたことを、自らの身体を通して言葉にしていて、生活者としての実感が滲んでいます。しかし生活者でありながら、外部者でもある彼らにしか書けないことに、少しだけ、胸が痛くなりもします。

彼らが当時住んだのは、水俣市袋の出月の患者家庭が貸し出していた小さな家です。そこから私の実家から100mほどで、彼らの写真集には、あの時代、1970年~73年を生きている、まだ若くしっとりしている近所のおじさんおばさんや、今仕事で出会う学者さんや運動家の人たちの日常が描かれています。少し気後れします。 その時期に水俣で、または東京のチッソ(現JNC)本社前で何があったのか。それがつぶさに描かれています。きっと近所のおじさんやおばさんたちが彼らにしか話さなかった、ここではとても書けないような集落の人間関係も。少し戸惑います。

以前の写真集の「医学解説」は原田正純医師だったのが、今回は岡山から水俣へ通い続け、患者の「見えざる症状」を追い続ける頼藤貴志医師が、「歴史と解説」はシグロの山上徹二郎さんだったが、今回は朝日新聞記者という肩書をスパッとの捨てて水俣への永住を決めた、今をときめく斎藤靖史さんが継承して書いています。

出版社は「株式会社クレヴィス」で担当は木村さん。社名の「Crevis」ってどういう意味?って尋ねたら、「Creative(創造)とVisual(視覚)という二つの言葉から来ているんだ」と教えてくれました。 作家さんたちが独自の世界観を注ぎ込んだ作品が、見るものに新しい、未知なる世界への扉を開いてくれる。そんな作品の魅力を通して人と繋がりたいとのことで、熱い!

個人的に好きな岩合光昭さんのたくさんの写真集をめちゃくちゃ出しているところ。水俣の水中写真を撮っている尾崎たまきさんの師匠の中村征夫さんの写真集も出版しておられて、話が盛り上がりました。 A4変型判の208pで4,400円(税込)です。 こちらのページから先行予約をしてくださると、相思社の助けにもなります! あと、今ならなんと、会員でなくとも「ごんずい」を付けます! (必死(笑))

同僚の木下くんが、かっこいいページを作ってくれました◎最近木下くんがPCに張り付いて、オンラインショップのページをリニューアルしてくれました!クレジットカードまで使えるようになって…。買わなくたっていい!(ほんとうは買ってほしいけど)木下くんの努力の結晶と、数ある個性的な本たちを、ぜひぜひ覗いてみてくださいね。

※からし蓮根=熊本の郷土料理。蓮根の穴に辛子味噌を隙間無く詰め込んで辛子味噌を詰めて半日置いて、小麦粉とターメリックと水で作った揚げ衣をたっぷりつけて180度の油で揚げる。菜種油を使うから更に黄色くなる。みんな大好きからし蓮根。

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