10月25日~27日、水俣病歴史考証館の展示物「ネコ実験の小屋」の保存処理を行いました。国立民族学博物館の日高信吾さんたちが全面的に協力してくださり、トタンや金網の錆を除去してオリーブオイルの塗布をしました。
ほかの展示物は養生して、ブラシで小屋の錆を落としていきます。ブラシでこする人と、掃除機で粉塵を吸い取る人のペアで作業をしました。金網はもろくなっている箇所もあり、裏から板を当てながら慎重にこすりました。小屋の中に入るのは初めてで緊張しました・・・
サビを落としたら、刷毛と筆で油を塗りました。油を塗ったところは黒っぽい色になっています。
このネコ小屋は、チッソ附属病院で水俣病の原因究明のための実験に使用されていたものです。400号とつけられた猫は廃液を与えられ、水俣病の原因はつきとめられました。中心となった細川一医師は第一次訴訟で証言し、チッソ工場の廃水が住民に深刻な健康被害をもたらしていると把握しつつも排水を流し続けた事実が明らかになりました。チッソの加害を説明するモノは、チッソの内部資料が入手できないこともあり、「なぜ被害が放置されたのか」「なぜ汚染が拡大したのか」という重要な問いに直接答えを与える歴史的遺物は証言を除くとわずかしかありません。水俣病が放置された歴史を語る貴重な資料です。
1980年代に、元チッソの第一組合でチッソ附属病院近くに住んでいた人から寄贈をうけ、考証館に展示されるに至りました。附属病院から小屋を引き取ったその人畑で使用されていたとのことですが、もう亡くなられているので詳細は不明のままです。チッソ附属病院で行われていた猫実験については情報を集めています。当時チッソ附属病院に入院して実験や猫を目撃した人、猫実験にかかわった人など、もしいらっしゃいましたらぜひお話しをお聞かせください。