これまで幾度と無く感じてきましたが、今回の水俣病の特措法での医者の検診はおかしいです。そうでないお医者さんも県職員の方も、もちろん沢山おられます、という前提で。
熊本県から派遣されたお医者さんが、水俣病患者の方に対する検査で触診もせずに(体のどこも触らずに)、「手先足先の感覚障害はない」、という診断書を書いてたのが、相談に来た方と県への聞き取りから分かりました。
今回の水俣病検診では、通常、手や足の感覚障害を調べ、認められれば補償の対象になります。感覚障害というものは、触れたり、綿棒や爪楊枝を使って検診をして初めて分かります。そういった検査は一切なく、診断書には「感覚障害なし」、この方は棄却になりました。
その方は、幼い頃から水俣病特有の症状で苦しんできました。まさに病気のデパートです。
長年水俣病患者の検診を続けている緒方俊一郎先生の診断では、間違いなく「水俣病」の方です。(緒方先生は、学生時代原田正純さんと調査団で水俣をまわり、以来、40年以上水俣病に関わってきたお医者さんです)
熊本県が実態調査をしたところ、Y労災病院の医者は「検査は綿棒と爪楊枝で行った」と言ったそうです。
熊本県は当初、「担当医がそう言っているのですから、検診は行われました」と言いました。
県職員M氏は続けます。「永野さんはその場で検診を見ていたのですか」と問われ、「じゃああなたは見ていたのですか」と会話は堂々巡りです。
医者はウソをつかないのでしょうか。患者のことはニセ患者扱いするのに、医者の言うことは頭から信じるのです。それこそ医者の証言の証拠はどこにもないのです。
水俣病患者たちは、長年行政からのニセ患者発言や棄却になることによっての世間からの目に苦しんできました。水銀の被害を受け、患者となった上に更なる苦痛を受けているのです。
検診では、医者の名前は公表されません。熊本県に守られての密室での検診。
相思社にいて思うのは、たいていの医者は水俣病嫌いだということです。水俣病患者だと分かると診察拒否をする医者もいます。原田正純さんのような医者は少なく、むしろ体制側の人のほうが多いのです。
別の方は、全身を爪楊枝で刺されまくっての棄却。あんな屈辱的な検診はもう受けたくないと言っています。
別の方は、血が出るほどに刺されました。別の方は、刺された跡がアザになって数日消えなかったそうです。以前には安全ピンで刺されたという人もいました。
そして検診時間は決まって5分以内。こんな短時間で患者の何が分かるのでしょう。
今日お話をした熊本県職員のMさんは、「刺されまくって」という証言を聞いて笑い出しました。
私の怒りは頂点に達しました。「なぜ笑うのですか?」と聞くと、「その言い方がおかしくて」、と言います。何がおかしいのか、私には分かりません。この人は以前に、重い症状を持つ患者の方が棄却になり納得がいかないと訴えた時に、「残念でしたね、まぁいろんな人生ありますからね」と切り捨てた人です。
被害者は、どんな検診でもこらえます。声をあげる方はごく一部です。
1970年代のことですが、認定申請をしていた患者たちが、あまりにもひどい検診内容に、検診拒否運動をしたことがあります。40年経った今、同じことが起きています。
今回申請をした方の内、棄却になる方がどれだけいるか分かりません。しかし、今、棄却になった方の聞き取りを相思社で行うと、全員に症状があります。そしてみなさん、ずさんな検診を受けています。
こんな検診の結果の補償対象者数など、まったくあてになりません。
水俣病事件と全く同じ経過を辿っている原発事故の被害者も、今後同じ目にあうかもしれません。
こういった医者や行政の存在をどうか覚えていてください。
そして今回棄却になった人たちがニセ患者などではないことを、覚えておいてください。
4 Responses to 水俣病検診と症状