水俣病事件を歴史のなかで考証する

2019年9月27日、熊本県民カレッジ「パレアミュージアム」にて葛西が「水俣病事件を歴史のなかで考証する」というタイトルで講演をしました。

水俣病についての講演は「人権」とか「環境」とかいうテーマで依頼されることが多いのですが、今回は特にそういう限定がないので、普段できないけど本当は一番したかったテーマの話をしてきました。

「水俣病を繰り返さない世の中をつくるために」活動をしている私たちですが、いったい水俣病の「何を」繰り返してはいけないのか。それはメチル水銀中毒事件だけではないはずです。では何なのかという話です。

私は、水俣病事件を資本主義経済がもたらした災禍だと捉えています。それを通して近現代史を考証しますと、命が失われたり脅かされたりする様々な社会的な事件や現象が、水俣病と根っこが繋がって見えてくるのです。

これをうまくお話するのは大変難しいことですが、これからも試行錯誤しながら深めていきたいと思っています。
水俣病を通して近現代史をみる|水俣病センター相思社
この講座は、県内の博物館の方々が自館のPRのような話をされるシリーズだそうなので、参加者の方はいきなり歴史講義をされて少し驚かれたようです。90分お付き合いくださり、ありがとうございました。
終了後、次のような感想が寄せられました。

  • いろいろな考えが頭をよぎり、考えがまとまらない。水俣病とは、これからも勉強して行きます。
  • 私が見てきたのと異なる視点での話であったことに満足しました。
  • 水俣病の歴史について詳しく知ることができたが、水俣病についてもっと知りたいと思う。
  • とてもわかりやすく歴史を振りかえることが出来た。「資本主義」は現在ととても関連しているので興味深くきけた。
  • 熊本に住んではいますが、水俣病についてくわしくは知らないので、参加しました。私が生まれたのは新潟県で新潟にも新潟水俣病という病気があるので、海と川という違いはありますが、お話を聞くことが出来て良かったです。近代史は侵略の歴史なのだなと思いました。純粋に日本史の講義として聞きました。良かったです。
  • チッソの歴史が勉強できた。
  • こんな話を聞けるとは思っていなかった。根源的な問題の指摘があった。しかし、問題は山積みでここからどういうことになるのか?
  • 水俣病の歴史がよくわかりました。
  • 話しの内容は良く理解できた(資料が少なく参考出来なかった)
  • 水俣病追及によって世界の問題-資本主義の弊害による根本的な問題であることを知りました。熱弁でした。考えさせる講義でした。
  • 「地球温温暖化」の問題が、今、また「マスコミ」でも取り上げられているが、人類の未来が問われている。これを果たして人類はのりこえていけるのか。そのことにも今日のはなしは関係していた。

今回は下記の年表を示しながら話しました。

水俣・水俣病関連 日本史・世界史
1873 野口遵 金沢に生まれる
1889 市政・町村制始まる
1890 水俣村が誕生
1904〜05 日露戦争
1906 曾木電気設立 塩が専売制となる
1907 日本カーバイド商会設立
1908 日本窒素肥料株式会社設立
1910 日韓併合
1914-18 第一次世界大戦
1923 延岡工場完成 関東大震災
アンモニアの合成に成功
1924 朝鮮半島への進出を決定
1926 朝鮮窒素肥料・朝鮮水電設立
1929 世界大恐慌(昭和恐慌)
1931 天皇の水俣工場訪問 柳条湖事件(満州事変)
1932 アセトアルデヒド製造開始 満州国建国
5・15事件
1936 2・26事件
1937 社史『日本窒素肥料事業大観』発行
1939 吉林人造石油株式会社
1941 塩化ビニル製造開始 開戦
1944 野口遵死去
1945 水俣空襲 敗戦
財閥解体~52年
1950 朝鮮戦争
1952 オクタノール製造開始 サンフランシスコ講和条約発効
1953 水俣海岸部の猫が狂死 朝鮮戦争 停戦
1954 「猫てんかん」記事
1955 ベトナム戦争 〜1975
1956 水俣病公式確認 経済白書「もはや戦後でない」
1960 新潟水俣病公式確認 国民所得倍増計画
1962 千葉五井工場の建設に着手
1968 水俣工場アセトアルデヒド製造終了(5月) 世界・国内での社会運動の興隆
水俣病公害認定(9月)
1970 「公害国会」
1972 ストックホルム国連人間環境会議
日本列島改造計画
1973 液晶の製造設備完成 オイルショック
第一次訴訟患者勝訴
補償協定締結
1974 相思社創立
1979 スリーマイル原発事故
1986 チェルノブイリ原発事故
1988 地球温暖化問題(UNEP)
1991 ソビエト崩壊
1992 環境と開発に関するリオ宣言
2011 福島第一原発事故
2015 「持続可能な開発」(SDGs)
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