ゆりこさんの旧正月

「百合子おばさんが、旧正月に豆餅作ろうって」と、真由美さんから連絡をもらう。旧暦の新年、旧正月は二十四節気の「雨水」の直前の新月の日だそうで、今年は2月12日だそうだ。

1月1日の「新正月」にもお餅をたくさんいただいてしまったのに、旧正月もお祝いするのか~!

旧正月の前日(旧大晦日?)の朝8時過ぎにお邪魔すると、もうかまどには赤い火が燃え、せいろからは湯気がもくもく上がっている。

マスクをしているため、いつもに増して百合子さんの水俣弁が聞き取れない。妖精のようなお二人は声も大きくないし、耳もちょっと遠めだが、なぜか滞りなく会話が進む。声以外で通じ合ってるんだろうな…すごいな…

真由美さんが「これ、何か知ってる?」と、かまどのへりについた黒いすすを指しておっしゃる。すす?ですか?「ここらではへぐろっていうのよ」と教えてもらう。午後に新しい靴をおろす時には、靴の裏にへぐろをつけないと「つこくっぞ(つっこけるぞ)」と言われたそう。朝に新しい靴をおろすときはそのまま履いて大丈夫らしい。

そんな話を聞いている間にもち米が蒸しあがる。結局いつものように何の手伝いもできずに見ているだけになりそうなので、せいろを上げ下ろしする作業ぐらいさせてもらおうかな。
私「せいろは持ちますよ」
百合子さん「え?!(聞こえてない)」
私「せいろ、私がします」
百合子さん「えぇえ?!」
私「これ、私がします!!」
百合子さん「え?!え?!!」

私「おっがすっで!」
百合子さん「あば、せろ!」


おっ(私)が、すっで(するので)!が百合子さんに通じた記念すべき正月になった。ちなみに百合子さんの返事は、あば(=じゃあ)せろ(=しなさい)。

初めて通じた「オッガスッデ」の感慨に浸る間もなく、せいろを下ろし今度は餅搗き機へ。百合子さんは餅用?の軍手どこかから引っ張り出し、せいろでもち米と一緒に蒸した黒豆をグイグイ餅の中に押し込んでいる。

入れる時にはぎょっとするぐらい大量に見える砂糖も、完成するとちょうどよいあまさで、とてもおいしかった。いつもごちそうさまです。次こそはオッガスッデを活用してもう少しお手伝いさせてもらいたい…

百合子さんたちが好きすぎて、冊子をつくって旧正月をお祝いした。

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