ごんずい156号を3月23日(月)発送いたしました。全国の会員の方には遅くとも1週間以内に到着すると思います。
今号も、お読みになりたい方には「おためし」として謹呈いたしますので、お気軽にお申し込みください。
発送作業には地元の若者が手伝いに来てくれました。
今回の特集は
朝鮮半島と水俣病 です。
- 良き隣国の大事な友だちへの便り 蔚山未来共生研究所 金蓮淑 p 3
- 韓国、蔚山・浦項訪問記 永野三智 p5
- 朝鮮での思い出と脱出記 石牟禮 智 p10
- 日窒財閥と朝鮮 一橋大学 加藤圭木 p14
- 歴史を語り、教訓を問う 水俣病資料館語り部 川本愛一郎 p20
- COP3@ジュネーブ報告 小泉 初恵 p24
- 住めば水俣(2) 小泉 初恵 p28
- 水俣病歴史考証館感想 p30
- 相思社日誌・活動報告 葛西,木下,小泉,辻,永野 p32
「まえがき」より
特集 朝鮮半島と水俣病
2016年、韓国の市民団体「蔚山未来共生研究所」のメンバーが、相思社に来た。水俣病を学びながら、海に浸かって遊んだり、韓国料理を振る舞ってくださったりして、ともに楽しんで帰っていった。
その翌年、韓国のテレビ局から取材の依頼があった。韓国東海岸の浦項という都市にあるPOSCO という製鉄工場付近で、深刻な水銀汚染が起こっているという。それで、水銀による公害で有名な水俣を取材したいということだった。話を聞いた私はとても興味深く、なんとなく何かに繋がっていくような気がして、彼らを歓待した。
だがその後しばらく連絡も情報も途絶えていた。そして慰安婦問題や徴用工訴訟で両国がいがみあい、飛行機が次々と減便され、韓日関係はすっかり冷え切り「冬の時代」を迎えてしまった。
そんななか、蔚山未来共生研究所から相思社に講演の依頼が来た。17年に来たテレビクルーも浦項の汚染現場を案内してくれるという。こんなときこそ草の根の交流が活きる。そう考え、永野は韓国に向かった。
浦項の町は、チッソの水俣と同じようにPOSCO 城下町として栄えていた。POSCOは、日本で徴用工問題が報じられる時に誰もが耳にする「日韓請求権協定」に基づく補償金で作られた会社なのである。現在の水銀汚染の源流に、かつての侵略の歴史がつながっていることを思いがけず知った。その侵略に便乗し、軍の力を盾に、朝鮮半島を我が物のように切り拓き、労働力を搾取し、隆盛を極めたのがチッソだった。戦後、その暴力は水俣や不知火海周辺の人々に浴びせられる。
朝鮮半島には、日本人が忘却してきた加害の歴史がある。水俣病事件は、その痛い記憶の傷を開いたところに全貌が潜んでいる。
こんな冷え込んだ韓日関係のなかでも、招待してくれた韓国の人たち。水俣病の話を真剣に聞いてくれた先生や子どもたち。横暴な行政や大企業と闘う浦項のやさしい人たち。日本人である永野を歓待してくれた彼らも、かつての日本による被害の記憶は鮮明に受け継いでいる。あの戦争は、わずか2~3世代で辿られる近い過去なのである。
彼らといっしょに近代史を紐解いていくようなことがしたい。今回の特集がその手始めになればいいと思っている。(葛西伸夫)